【令和8年度版】労働保険年度更新:人事・総務担当者のための完全ガイド

【令和8年度版】労働保険年度更新:人事・総務担当者のための完全ガイド

「今年もあの時期がやってきた…」と、頭を抱えていませんか? 労働保険の年度更新は、企業の人事・総務・経理担当者にとって毎年避けて通れない重要な手続きです。令和8年度は、雇用保険料率の引き下げや電子申請義務化対象事業場への通知方法変更など、押さえておくべき変更点も少なくありません。本記事では、そんな年度更新手続きについて、令和8年度の最新情報を踏まえ、人事・総務担当者の皆様が「これさえ読めば大丈夫!」と思えるような、網羅的かつ実践的なガイドをお届けします。正確な計算方法、申告・納付の期限、そして手続きをスムーズに進めるための効率化のコツまで、分かりやすく解説。このガイドを参考に、期限内の確実な手続き完了と、担当者の業務負担軽減を目指しましょう。

1. 労働保険年度更新とは? ~手続きの目的と概要~

労働保険の年度更新は、前年度(令和7年4月1日~令和8年3月31日)に支払った賃金総額に基づいて労災保険料と雇用保険料を確定させ、新年度(令和8年4月1日~令和9年3月31日)の見込み賃金総額に基づいて概算保険料を申告・納付する手続きです。従業員を1人でも雇用している事業主には、毎年の実施が義務付けられています。

労働保険制度の目的

労働保険制度は、労働者の生活と雇用の安定、福祉の増進を図ることを目的とした社会保険制度です。具体的には、労働災害が発生した際に労働者やその遺族を保護する「労災保険」と、失業した場合の生活保障や再就職支援、育児休業中の給付などを提供する「雇用保険」の二つの柱で構成されています。これらの制度は、企業が支払う保険料によって支えられています。

年度更新の概要と義務

年度更新とは、労働保険料の過不足を精算し、新たな年度の保険料を見積もるための重要な手続きです。前年度に実際に支払った賃金総額に基づき「確定保険料」を算出し、すでに納付した「概算保険料」との差額を精算します。同時に、新年度に支払う見込みの賃金総額に基づいて「概算保険料」を算出し、これを申告・納付します。この手続きは、労働保険料を適正に徴収し、労働保険制度が円滑に運営されるために不可欠であり、労働者を一人でも雇用しているすべての事業主に義務付けられています。

2. 令和8年度の申告・納付期間と主な変更点

2-1. 令和8年度 申告・納付期間

令和8年度の労働保険年度更新の申告・納付期間は、令和8年6月1日(月)から7月10日(金)までです。この期間内に、前年度の確定保険料と新年度の概算保険料の申告・納付を完了させる必要があります。7月10日が土日祝日にあたる場合は、翌開庁日が期限となりますが、令和8年度は金曜日であるため、原則どおり7月10日が最終期限となります。期限厳守が求められ、遅れると追徴金などのペナルティが課される可能性があるため、早めの準備と手続きを心がけましょう。

2-2. 令和8年度の主な変更点

令和8年度の労働保険年度更新においては、以下の主な変更点があります。担当者の皆様は、これらの変更点を正確に把握し、適切な対応を行うことが重要です。

  • 雇用保険料率の引き下げ 令和8年度からは、雇用保険料率が引き下げられます。これにより、企業が負担する雇用保険料の額が変更されるため、正確な料率に基づいて計算を行う必要があります。詳細な料率は、厚生労働省のウェブサイトなどで確認できますが、年度更新の際には最新の料率を適用してください。

  • 電子申請義務化対象事業場への紙申告書送付廃止 電子申請が義務化されている特定の事業場に対し、従来の紙の申告書(A4サイズの緑または青の封筒で送付されていたもの)の送付が廃止されます。これらの事業場には、定形郵便サイズの茶封筒で「労働保険料等算定基礎賃金集計表」が送付されることになります。この変更により、電子申請義務化対象事業場は、e-Govなどを利用した電子申請が必須となりますので、事前に準備を進めておきましょう。

  • 労働保険相談チャットの終了 これまで提供されてきた労働保険に関する相談チャットサービスが、令和8年度をもって終了します。今後は、労働局の窓口や電話相談などを利用して、不明点の確認や相談を行うことになります。

3. 労働保険年度更新の手続きの流れ

労働保険の年度更新は、毎年決まった期間に行う重要な手続きです。ここでは、その一連の流れを具体的に解説します。

3-1. 申告書類の確認

毎年5月末から6月初旬にかけて、厚生労働省(または労働局)から緑色や青色の封筒で「労働保険料等申告書」などの書類が送付されてきます。この書類には、前年度の労働保険の確定保険料と新年度の概算保険料を申告・納付するための様式が含まれています。書類が到着したら、まず内容に誤りがないか、自社の情報が正しく記載されているかを確認しましょう。電子申請義務化の対象事業場には紙の申告書が送付されませんので、e-Govでログインし、電子申請の準備を進める必要があります。

3-2. 前年度の確定保険料の算出

年度更新手続きの最初のステップは、前年度(令和7年4月1日から令和8年3月31日)に支払ったすべての賃金(賃金総額)を集計し、それに基づいて確定保険料を算出することです。賃金集計の範囲には、基本給、賞与、各種手当(通勤手当、時間外手当、役職手当など)が含まれます。この賃金総額に、事業の種類に応じた労災保険率と雇用保険率をそれぞれ乗じて、確定保険料を計算します。

3-3. 新年度の概算保険料の算出

次に、新年度(令和8年4月1日から令和9年3月31日)に支払う予定の賃金総額を見込み、それに基づいて概算保険料を算出します。通常、前年度の賃金総額を参考に、従業員の増減や給与改定の予定などを考慮して見込み額を算出します。この概算賃金総額に、新年度の労災保険率と雇用保険率を乗じて概算保険料を計算します。概算保険料は、確定保険料との差額を精算するために事前に納付するものです。

3-4. 一般拠出金の計算

労働保険料の他に、「石綿健康被害救済法」に基づく一般拠出金も同時に申告・納付が必要です。一般拠出金は、労災保険の対象となるすべての事業主が負担するもので、前年度の賃金総額に定められた拠出金率(令和8年度も0.002%)を乗じて計算します。労働保険料と合わせて申告書に記載し、一体として納付します。

3-5. 申告書の作成

これまでのステップで算出した確定保険料、概算保険料、一般拠出金の額を、送付された「労働保険料等申告書」に正確に記入します。電子申請の場合は、e-Govシステム上で必要事項を入力していきます。記入漏れや計算ミスがないよう、複数人で確認するなど慎重な作業が求められます。

3-6. 申告書の提出と保険料の納付

作成した申告書は、以下のいずれかの方法で提出します。

  • 労働基準監督署

  • 都道府県労働局

  • 金融機関

  • 電子申請(e-Gov)

電子申請義務化の対象事業場は、e-Govでの提出が必須です。

保険料の納付方法は、現金納付(金融機関、コンビニエンスストア)、口座振替、電子納付(インターネットバンキングなど)があります。納付期限は原則として申告期限と同日(7月10日)ですが、概算保険料は一定の要件を満たせば分割納付も可能です。期限内の提出と納付を確実に行いましょう。

4. 労働保険料の計算方法:労災保険・雇用保険・一般拠出金

労働保険の年度更新では、労災保険料、雇用保険料、そして一般拠出金の3つを計算し、申告・納付する必要があります。これらの保険料・拠出金は、それぞれ異なる計算式と料率が適用されます。ここでは、それぞれの計算方法について詳しく解説します。

4-1. 労災保険料の計算

労災保険料は、事業の種類によって異なる労災保険料率を、対象となる賃金総額に乗じて算出します。

【計算式】 労災保険料 = 賃金総額 × 労災保険料率

労災保険料率は、事業の種類ごとに定められており、事業の危険度に応じて細かく分類されています。例えば、事務を行う事業の料率は比較的低く、建設事業や製造業など危険を伴う事業の料率は高めに設定されています。

【計算例】 賃金総額が5,000万円で、労災保険料率が3/1,000(0.003)の事業の場合 5,000万円 × 0.003 = 15万円

4-2. 雇用保険料の計算

雇用保険料は、対象となる賃金総額に雇用保険料率を乗じて算出します。雇用保険料率は、事業の種類(一般の事業、農林水産・清酒製造の事業、建設の事業)と、事業主負担分、被保険者負担分で異なります。令和8年度においては、雇用保険料率が引き下げられます。

【計算式】 雇用保険料 = 賃金総額 × 雇用保険料率

【令和8年度の雇用保険料率(一般の事業の場合)】

  • 事業主負担分: 0.6% (0.006)

  • 被保険者負担分: 0.3% (0.003)

  • 合計(労働者負担分+事業主負担分): 0.9% (0.009)

【計算例】 賃金総額が5,000万円の一般の事業の場合

  • 事業主負担分の雇用保険料: 5,000万円 × 0.006 = 30万円

  • 被保険者負担分の雇用保険料: 5,000万円 × 0.003 = 15万円

4-3. 一般拠出金の計算

一般拠出金は、石綿による健康被害の救済に関する費用に充てるためのもので、労災保険の対象となるすべての事業主が負担します。計算式はシンプルで、賃金総額に一律の料率(0.02/1000)を乗じて算出します。

【計算式】 一般拠出金 = 賃金総額 × 0.02/1000(0.00002)

ここでいう賃金総額は、労災保険の対象となる労働者に対して支払った賃金の総額を指します。

【計算例】 賃金総額が5,000万円の場合 5,000万円 × 0.00002 = 1,000円

5. 賃金集計の重要ポイントと注意点

労働保険の年度更新において、最も重要かつ複雑な作業の一つが賃金集計です。正確な保険料を算出するためには、何が「賃金」として扱われ、どの期間の、誰の賃金を集計すべきかを正しく理解しておく必要があります。

5-1. 賃金の定義とは?

労働保険における「賃金」とは、労働の対償として事業主が従業員に支払うすべてのものを指します。これには、基本給だけでなく、各種手当や賞与なども含まれます。しかし、労働の対償とみなされないものや、一時的な慶弔金などは賃金には含まれません。

具体的に賃金に含まれるものと含まれないものは以下の通りです。

  • 賃金に含まれるもの

    • 基本給、各種手当(扶養手当、役職手当、住宅手当、通勤手当、時間外手当など)

    • 賞与(ボーナス)、期末手当

    • 現物給与(食事、被服、社宅など、労働協約や就業規則で定められたもの)

    • チップ、報奨金など(事業主が支払うもの)

  • 賃金に含まれないもの

    • 役員報酬(労働者としての性格を持たない場合)

    • 退職金、解雇予告手当

    • 出張旅費、宿泊費、日当など(実費弁償的なもの)

    • 慶弔見舞金、災害見舞金

    • 福利厚生施設費(健康診断費用、社内イベント費用など)

    • 財産形成貯蓄の奨励金

これらの区分を正確に把握し、賃金総額を漏れなく、かつ過不足なく集計することが大切です。

5-2. 集計期間と基準

労働保険の賃金集計期間は、前年度の4月1日から翌年3月31日までの1年間です。令和8年度の年度更新では、令和7年4月1日から令和8年3月31日までの期間に支払いが確定した賃金を集計します。

賃金集計の基準は、「支払日」ではなく「賃金計算期間の締日」を基準とします。例えば、3月分の給与が4月10日に支払われる場合、その給与は3月分の賃金として前年度の集計期間に含めることになります。

5-3. 対象となる従業員

賃金集計の対象となる従業員は、事業に使用されるすべての労働者です。これには、正規雇用者だけでなく、パートタイマー、アルバイト、契約社員、派遣労働者(派遣元の賃金として集計)、さらには休職中の従業員や年度途中で退職した従業員なども含まれます。

特に注意が必要なのは、雇用保険の被保険者資格がない従業員の場合です。例えば、短時間労働者などで雇用保険の加入要件を満たさない従業員であっても、労災保険の適用対象であれば、その賃金は労災保険料算定の基礎となる賃金総額に含めて集計する必要があります。全ての労働者を対象に、漏れなく賃金を集計することが正確な申告につながります。

6. 申告・納付期限を過ぎた場合のリスク

労働保険の年度更新は、企業の義務であり、その申告・納付を怠ると、企業にとって重大なリスクやペナルティが発生する可能性があります。ここでは、期限を過ぎてしまった場合にどのような影響があるのかを具体的に解説します。

追徴金・延滞金の発生

労働保険の年度更新の申告・納付を期限内に行わなかった場合、最も直接的なペナルティとして「追徴金」や「延滞金」が発生します。追徴金は、申告・納付を怠った確定保険料の10%に相当する額が徴収されるものです。また、延滞金は、納付期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、未納の保険料に対して発生します。これらの追加費用は企業の負担を増やすだけでなく、資金繰りにも影響を及ぼす可能性があります。

その他のペナルティと企業への影響

金銭的なペナルティだけでなく、期限を過ぎたことによるその他の影響も無視できません。例えば、雇用に関する助成金や補助金は、労働保険料の適正な申告・納付が前提条件となっていることが多く、期限遅れがあると受給資格を失う可能性があります。また、公共事業の入札資格などに必要な「労働保険料等納入証明書」が発行されなくなり、事業機会の損失につながることもあります。さらに、労働保険の適正な手続きは企業のコンプライアンスを示すものであり、これを怠ることは企業の社会的信用を損ない、取引先や従業員からの信頼失墜にもつながりかねません。

7. 手続きを効率化するためのポイント

労働保険の年度更新は、毎年発生する重要な業務ですが、その手続きは多岐にわたり、担当者にとって大きな負担となることがあります。しかし、いくつかの工夫やツールを活用することで、効率化を図り、業務負担を軽減することが可能です。ここでは、年度更新手続きをスムーズに進めるための具体的なポイントをご紹介します。

7-1. 電子申請の活用

電子申請は、労働保険の年度更新手続きを効率化する上で非常に有効な手段です。厚生労働省が運営する「e-Gov」を利用することで、インターネットを通じて24時間いつでも申告書を提出できるようになります。これにより、申告書の作成・提出にかかる時間を大幅に短縮できるだけでなく、手書きによる記入ミスや書類の郵送・持参の手間を省くことができます。

特に、資本金1億円を超える法人など、一部の事業場においては電子申請が義務化されています。義務化対象の事業場は、紙媒体での申告書送付が廃止されるため、e-Govの利用は必須となります。電子申請は、手続きの正確性と効率性を高める上で、今後ますます重要になるでしょう。

7-2. 口座振替の利用

労働保険料の納付方法として、口座振替を選択することも効率化につながります。事前に口座振替の申し込みを済ませておけば、指定された期日に自動で保険料が引き落とされるため、納付忘れを防ぎ、金融機関へ出向く手間を省くことができます。

口座振替の申し込みは、所轄の労働基準監督署やハローワーク、または金融機関の窓口で行うことができます。一度手続きをしてしまえば、毎年自動的に適用されるため、継続的な効率化が期待できます。

7-3. 計算支援ツールの活用

労働保険料の計算は複雑であり、ミスが発生しやすい作業です。厚生労働省が提供しているExcel形式の計算支援ツールなどを活用することで、正確な保険料計算をサポートし、担当者の負担を軽減できます。これらのツールは、賃金データなどを入力するだけで自動的に保険料を算出してくれるため、計算ミスを防ぎ、作業時間を短縮することが可能です。

また、市販の給与計算ソフトや人事労務管理システムの中には、労働保険の年度更新に対応した機能を備えているものも多くあります。自社の状況に合わせて、最適なツールを選び、積極的に活用しましょう。

7-4. 社労士・労働保険事務組合への委託

自社での手続きが難しい場合や、より確実に正確な申告を行いたい場合は、社会保険労務士(社労士)や労働保険事務組合への委託を検討するのも一つの方法です。

社労士は、労働社会保険の手続きに関する専門家であり、年度更新に関する相談から申告書作成、提出代行まで一貫してサポートしてくれます。また、労働保険事務組合に委託すれば、労働保険料の申告・納付に関する事務処理を代行してもらえるだけでなく、労災保険の特別加入制度などを利用できるメリットもあります。これらの専門家に委託することで、法改正への対応や複雑な計算など、専門知識が求められる業務を安心して任せることができ、担当者の事務負担を大幅に軽減することが可能です。

8. まとめ:令和8年度の労働保険年度更新をスムーズに完了させるために

令和8年度の労働保険年度更新は、雇用保険料率の変更や電子申請義務化対象事業場への通知方法変更など、重要な変更点があります。正確な賃金集計と計算、期限内の申告・納付が不可欠であり、電子申請や専門家への委託といった効率化の手段も積極的に活用することで、担当者の業務負担を軽減し、企業のコンプライアンスを確実に遵守することができます。

重要ポイントの再確認

本記事で解説した令和8年度の労働保険年度更新において、特に押さえておくべき重要ポイントを以下にまとめます。

  • 申告・納付期間の遵守: 毎年6月1日から7月10日までの期間内に、忘れずに手続きを完了させましょう。

  • 令和8年度の変更点への対応:

    • 雇用保険料率の変更: 雇用保険料率が引き下げられるため、最新の料率で正確に計算する必要があります。

    • 電子申請義務化対象事業場への通知方法: 紙の申告書は送付されず、電子申請での手続きが必須となるため、e-Govの利用準備を進めましょう。

  • 正確な賃金集計と保険料計算: 確定保険料と概算保険料、一般拠出金の計算は、賃金の定義と集計期間を正確に把握し、ミスなく行いましょう。

  • 効率化の活用: 電子申請、口座振替、計算支援ツール、そして社労士や労働保険事務組合への委託など、業務負担を軽減するための手段を積極的に検討・活用しましょう。

人事・総務担当者へのメッセージ

労働保険の年度更新は、企業の健全な運営を支える上で欠かせない重要な業務です。毎年訪れるこの時期に、変更点の把握から複雑な計算、そして期限内の申告・納付まで、多岐にわたる業務をこなす人事・総務担当者の皆様には、計り知れないご負担があることと存じます。

本ガイドが、令和8年度の年度更新手続きをスムーズに進める一助となれば幸いです。最新情報を正確に把握し、効率的な手段を賢く活用することで、この重要な業務を確実に乗り越え、企業のコンプライアンス強化に貢献していきましょう。