
「2026年7月1日日から、障害者の法定雇用率が引き上げられたらしいけど、うちの会社は大丈夫かな?」「中小企業だから関係ないと思っていたけど、対象になるの?」
このような不安をお持ちの人事・労務担当者の方、いらっしゃいませんか?
今回の法改正では、民間企業の法定雇用率が2.5%から2.7%へ引き上げられるだけでなく、雇用義務が生じる企業の範囲も拡大されました。これまで対象外だった中小企業も、新たに障害者雇用に取り組む必要が出てくる可能性があります。
本記事では、施行まで残された期間が限られている今、中小企業の人事・労務担当者が知っておくべき最新情報と、法改正にスムーズに対応するための具体的なステップを、計算例を交えながら分かりやすく解説します。これを読めば、自社の状況を正確に把握し、自信を持って障害者雇用を進めることができるはずです。
障害者雇用の法定雇用率、何が変わる?(2026年7月1日施行)
2026年7月1日より、障害者の法定雇用率が引き上げられました。これは、障害者雇用促進法に基づく重要な改正であり、特にこれまで雇用義務の対象外だった中小企業にとっても、自社の状況を再確認し、適切な対応を検討するきっかけとなります。
この法改正は、障害者がその能力や適性に応じて働くことができる社会の実現を目指すものであり、企業にはより一層の理解と協力が求められています。法定雇用率の引き上げと対象企業の拡大は、単に「義務」が増えるという側面だけでなく、多様な人材が活躍できる職場環境を整備し、企業の競争力向上にもつながる機会と捉えることができます。
本記事では、この法改正の具体的な内容について、中小企業の人事・労務担当者の方々が理解しやすいように、詳細を解説していきます。
法定雇用率の引き上げと対象企業の拡大
2026年7月1日から、障害者雇用の法定雇用率と対象企業の範囲が大きく変わりました。これまで障害者雇用義務の対象外だった中小企業も、今回の改正により新たに義務の対象となる可能性があります。
主な変更点は以下の2点です。
法定雇用率の引き上げ: 民間企業の法定雇用率が、現在の2.5%から2.7%に
雇用義務の対象企業拡大: 雇用義務が生じる企業の常用労働者数が、現在の40.0人以上から37.5人以上に拡大
この改正により、例えば常用労働者が38人の企業は、これまで雇用義務がなかったものの、2026年7月1日以降は義務の対象となります。自社の常用労働者数を確認し、今回の改正が自社にどのような影響を与えるのかを正確に把握することが重要です。
雇用義務の算定方法を徹底解説
それでは、具体的に自社で雇用すべき障害者の人数(法定雇用障害者数)がどのように計算されるのかを見ていきましょう。基本的な計算式は以下の通りです。
法定雇用障害者数 = 常用労働者数 × 法定雇用率
この計算式における「常用労働者数」と「障害者のカウント方法」には、いくつかのルールがあります。ここでは、それぞれのカウント方法と、2024年4月からの新たな変更点である「特定短時間労働者」の算定対象化、そして具体的な計算例を詳しく解説します。
常用労働者数のカウント方法
「常用労働者」とは、原則として、期間の定めのない労働契約を結んでいる方、または1年以上の雇用が見込まれる方を指します。この常用労働者数は、以下の基準でカウントされます。
週の所定労働時間が30時間以上の労働者:1人としてカウント
週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者(短時間労働者):0.5人としてカウント
正社員だけでなく、パートやアルバイト従業員であっても、上記の労働時間や雇用期間の条件を満たせば、常用労働者としてカウント対象となります。
障害者のカウント方法と特例措置
実際に雇用している障害者の方も、労働時間に応じてカウント方法が異なります。
週の所定労働時間が30時間以上の障害者:1人としてカウント
週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の障害者:0.5人としてカウント
さらに、障害の程度によっては、雇用率計算上の特例措置が適用されます。
重度の身体障害者、または重度の知的障害者:1人を2人としてカウント
例えば、週30時間以上勤務する重度の身体障害者を1人雇用していれば、雇用率上は2人分の雇用として算定されます。これは、重度障害者の雇用にはより手厚い配慮や環境整備が必要となるため、企業側の負担を考慮したものです。
特定短時間労働者の算定対象化
2024年4月からは、週の所定労働時間が10時間以上20時間未満の「特定短時間労働者」も、雇用率の算定対象に加えられるようになりました。
週の所定労働時間が10時間以上20時間未満の障害者(特定短時間労働者):0.5人としてカウント
これにより、企業はより多様な働き方で障害者を雇用しやすくなり、障害者の方にとっても、それぞれの状況に合わせた働き方を選択できる機会が増えました。この変更は、法定雇用率達成に向けた企業の選択肢を広げるものと言えるでしょう。
具体的な計算例
それでは、実際にいくつかのケースで法定雇用障害者数を計算してみましょう。計算結果の小数点以下は切り捨てとなります。
【例1】常用労働者が38人の企業の場合(2026年7月以降)
常用労働者数:38人(週30時間以上)
法定雇用率:2.7%
計算:38人 × 2.7% = 1.026人 → 1人
この企業は、少なくとも1人の障害者を雇用する義務が生じます。
【例2】常用労働者が50人の企業の場合(2026年7月以降)
常用労働者数:50人(週30時間以上)
法定雇用率:2.7%
計算:50人 × 2.7% = 1.35人 → 1人
この企業も、少なくとも1人の障害者を雇用する義務が生じます。
【例3】短時間労働者を含む企業の計算例(2026年7月以降)
週30時間以上の常用労働者:40人
週20時間以上30時間未満の常用短時間労働者:4人
常用労働者数合計:40人 + (4人 × 0.5) = 42人法定雇用率:2.7%
計算:42人 × 2.7% = 1.134人 → 1人
この企業は、少なくとも1人の障害者を雇用する義務が生じます。
このように、自社の常用労働者数と法定雇用率を正確に把握し、雇用すべき障害者数を算出することが、法定雇用率達成に向けた第一歩となります。
法定雇用率未達成の場合に発生するリスク
法定雇用率の達成は企業の義務であり、これを怠ると様々なリスクに直面する可能性があります。特に、罰則規定がないからといって軽視することはできません。ここでは、法定雇用率が未達成の場合に企業が負うことになる主なリスクについて解説します。
障害者雇用納付金とは?
障害者雇用納付金は、常用労働者数が100人を超える企業で、法定雇用率が未達成の場合に発生する制度です。これは、障害者を雇用しない企業が、雇用している企業を支援するためのものです。具体的には、法定雇用障害者数に不足する障害者1人につき、月額5万円が課されます。
この納付金は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)に納められ、障害者を雇用する事業主への助成金などに活用されています。納付金の対象となる企業は、毎年、障害者雇用状況報告書を提出する際に、納付金の申告・納付を行う必要があります。
行政指導や企業名公表のリスク
法定雇用率の未達成が続いた場合、納付金だけでなく、行政からの指導を受ける可能性もあります。ハローワークは、法定雇用率を達成していない企業に対し、まず達成指導を行います。この指導に従わない場合や、悪質なケースと判断された場合には、厚生労働大臣によって企業名が公表されるリスクがあります。
企業名の公表は、企業イメージや社会的信用を大きく損なうことにつながります。採用活動への悪影響や、取引先からの信頼失墜など、事業活動全体に及ぼす影響は甚大です。このような事態を避けるためにも、法定雇用率の達成に向けて早期から具体的な対策を講じることが非常に重要です。
中小企業が今すぐ取り組むべきこと
中小企業の人事・労務担当者として、今から具体的にどのような行動を取るべきか、4つのステップで解説します。
ステップ1:自社の状況を正確に把握する
まず最初に行うべきは、自社の常用労働者数を正確に確認し、2026年7月以降の法定雇用率(2.7%)を適用した場合の雇用義務人数を計算することです。現在の常用労働者数から、何人の障害者を雇用する必要があるのかを明確にすることで、今後の計画の土台ができます。この人数を把握せずして、次のステップに進むことはできません。
ステップ2:計画的な採用を進める
ステップ1で算出した雇用義務人数に対し、もし不足が生じている場合は、計画的に障害者の採用を進める必要があります。採用活動には、以下のようなチャネルが考えられます。
求人サイトの活用: 一般的な求人サイトでも、障害者向けの求人情報を掲載できます。
障害者専門の人材紹介サービス: 障害者の特性や企業側のニーズを理解した専門のコンサルタントが、最適なマッチングを支援してくれます。
就労移行支援事業所: 障害のある方が一般企業で働くための訓練を行う施設で、利用者の就職を支援しています。企業は事業所を通じて求人を出したり、職場実習を受け入れたりすることで、採用につながるケースが多くあります。
それぞれのチャネルの特徴を理解し、自社に合った方法で採用活動を進めましょう。
ステップ3:働きやすい職場環境を整備する
障害のある方が安心して長く働ける職場にするためには、採用だけでなく、働きやすい環境の整備が不可欠です。具体的には、以下のようなポイントが挙げられます。
業務の切り出し: 障害のある方が担当しやすいように、既存業務の一部を切り出して職務を設計します。
合理的配慮の提供: 障害の特性に応じた配慮(例:休憩室の確保、通勤時間の配慮、業務指示の伝え方の工夫など)を行うことが法的に義務付けられています。
指導担当者の配置: 業務内容や職場のルールを伝え、困りごとを相談できる担当者を配置することで、定着を促します。
これらの準備を進めることで、受け入れ側も不安なく、円滑な雇用につながります。
ステップ4:利用できる助成金・支援制度を活用する
障害者雇用を進める企業には、国や地方自治体から様々な助成金や支援制度が用意されています。これらの制度を積極的に活用することで、採用活動や職場環境整備にかかるコスト負担を軽減できます。主な情報源としては、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)やハローワークがあります。各制度には条件がありますので、自社が利用できるものがないか、早めに確認してみましょう。
まとめ:法改正を機会に、より良い企業づくりへ
2026年7月1日から施行された障害者雇用率の引き上げと対象企業の拡大は、中小企業にとって新たな課題であると同時に、企業成長の大きなチャンスでもあります。今回の法改正は、障害を持つ方々が社会に参加し、その能力を存分に発揮できるような、よりインクルーシブな社会を実現するための重要な一歩です。
法定雇用率の達成は企業の法的義務ですが、それだけに留まらず、多様な人材を受け入れることで、企業文化の活性化、新たな視点やイノベーションの創出、そして企業イメージの向上にもつながります。
本記事で解説した「自社の状況把握」「計画的な採用」「職場環境整備」「助成金活用」のステップを参考に、ぜひ前向きに障害者雇用に取り組んでみてください。不明な点があれば、ハローワークや障害者雇用支援センターなどの専門機関に積極的に相談し、支援を活用しましょう。
